ディズニー映画「くるみ割り人形と秘密の王国」から読み解くアメリカ(バレエ)事情
バレエファンとして、またディズニー映画としても観たくてうずうずしていた「くるみ割り人形と秘密の王国』(原題:The Nutcracker and the Four Realms) をようやく鑑賞。
息を飲む映像美で、どの場面をとってもかわいいに尽きます、、、
ではでは、キャスティングについて考察を。
◼︎アメリカンドリームを象徴するかのようなミスティ・コープランド
見所のバレエシーンを踊っているのは、バレリーナのイメージを覆す黒人バレリーナ "ミスティ・コープランド”
彼女はアメリカで一番大きなバレエ団であるアメリカン・バレエ・シアターで、黒人初プリンシパル(バレエ団の最上階級)に登りつめたバレリーナなのです。
彼女はバレエファンのみならず、バレエを知らない人をも巻き込み、全米で爆発的な知名度と人気を誇るバレリーナで、その人気はファッション誌の表紙を飾るほど。
彼女を一躍有名にしたのが、アンダーアーマーのCM。 "I WILL WHAT I WANT -私の意志のままに"というタイトルが付けられたこのCMで、不遇なバックグランドとその肉体美から一躍有名になりました。
シングルマザーの貧しい家庭に生まれ、バレエを始めたのはかなり遅く13歳。
しかし、バレエを初めてわずか2年でその才能を開花させコンクールを総なめし、18歳で憧れのアメリカン・バレエ・シアターへ入団します。
細身の体型が求められ、且つ圧倒的白人優位なバレエ界において、筋肉質な黒人ダンサーは相当な苦痛を味わいます。
しかし、身を削るような努力を重ね、晴れて2015年プリンシパルに昇格。
バレエは由緒正しいお嬢様のもの、白人優位主義のイメージを打ち破った、このサクセスストーリーをメディアがこぞって取り上げ一躍時の人へ。
ディズニーのシンデレラストーリーと重なると同時に、表面的とはいえ、人種差別に厳しい目が向けられるアメリカにおいて、彼女の起用は、フラットな思想を持っていることを伝える策略的なキャスティングだと思います。
(実際にハリウッドでは主要キャストに、アジア人や黒人などを含めなければいけないというルールがありますが、この映画はキーパーソンがすべて黒人。 ちょっとあからさまな感じも否めません.....)
〜Behind the amazing story〜
実は、バレエファンの中では、ミスティはプリンシパルほどの実力はないのでは?との見方もあります。
確かに、クラシックを踊る点においては、テクニカルな部分でも繊細さを欠ける部分があります。(もちろんすごくハイレベルな中での話で、他の魅力もたくさんあります)
実力以外の部分で彼女がプリンシパルになりえた背景は2つ。
1.白人優位のバレエ団のイメージ脱却
2.財政難を救う
1.は前述の通り。 アメリカン・バレエ・シアター(以下ABT)もアジア枠、黒人枠というように、グローバルにするために、枠を設けています。
2.実はABTは国立のバレエ団ではなく、寄付で賄われているバレエ団です。 (世界の名だたるバレエ団は国立です。)
アメリカ随一のオペラ・ハウス「メトロポリタン歌劇場」を拠点としていますが、この歌劇場もまた寄付で賄われています。
(よくMETガラと称されてセレブリティーのレッドカーペットの模様が取り上げれらますが、これこそチャリティーを募るためのイベント)
今ABTは、スターダンサー不足もあって深刻な財政難に陥っているのですが、客席を満席にできるのが、現在ミスティただ一人。 (スターダンサーの引退や怪我が重なり、深刻なのです)
ミスティが踊れば、それまでバレエに興味を持たなかった層も劇場へ足を運ぶのですから、その存在の大きさはプリンシパルに匹敵する存在というわけです。
ちなみに、すごくタイムリーな話なのですが、この映画「くるみ割り人形」でミスティのパートナーを務めているセルゲイ・ポルーニンのSNSが炎上..... (ポルーニンは昨年、彼のドキュメンタリー映画が日本でも大ヒットしました。 「オリエント急行」にも出演してます)
バレエ界の異端児的な存在でしたが、最近過激さを増し、Instagramで女性軽視発言をしたり、プーチンのタトゥを入れたり、もう精神崩壊状態なのでは?と言われています。
今週客演予定だった、パリ・オペラ座の舞台も、客演取りやめがアナウンスされました。
ダンサーとしては素晴らしいけれど、影がダークすぎて、危ないな、、と思っていたところ、遂に行くところまでいってしまった感じ....
ドラックに溺れている様子もあり、命を落とすことがないことを祈るばかりです....
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